いつも”問題ありません”の人2020年01月16日 21:09

上司や同僚から”問題ありませんか”と問いかけられた時に、いつも”問題ありません”と答える。
このような人は、例えば生産工程の空調が故障した時に生産に直接影響がないから”問題ありません”と答える。
それを受けた思慮が足りない上司も問題がなければ修理は後回しでいいと考えてしまう。
冷静に考えれば明らかにおかしい。空調しなくても問題がないのであれば工程に空調設備は必要ないわけであり、必要だから空調設備を設置しているわけである。
工程内で汗水たらして作業している人にしてみればとんでもないことである。
また、食品などを扱う工程では温湿度は品質に影響するので、”大問題”であり困ったことである。

問題とは何か  
「問題」はあるのではない。
誰かが「問題にする」ことによって,初めて「問題になる」もの。

だから,皆が大騒ぎして「問題になる」からといって,「問題にする」に値いしないことはある。
逆に,自分たちのミスを見ないふりし,なかったことにすることで,「問題にしない」ことはできかるかもしれないが,クレームがそうであるように,自分は問題にしたくなくても,顧客の方が「問題にする」ことで,「問題になる」だけである。

だから,「問題になる」前に「問題にする」ことが必要になる。例えば,
  「疑問」を「問題にする」 (問題にできる) 役割意識の主体性
  「不安」を「問題にする」 (問題にできる) 責任感
  「不足」を「問題にする」 (問題にできる) 顧客意識(カスタマーマインド)の先取り
  「不満」を「問題にする」 (問題にできる)
  「理想」を「問題にする」 (問題にできる) 目的意識・方向意識の視線
  「願望」を「問題にする」 (問題にできる) 感性
等々。これが“問題意識”である。

しかし,考えてみれば,こうして「問題にする」「問題」とは,自分の側に「~したい」「~あるべき」との思いがなければ存在しない。
~を実現したい,~をしたい,~しなくてはならない,~すべきだ,等々という思いがあるからこそ,現状を「問題」にすることができる。

だから,前提として,目的意識や自分自身のやるべきテーマ,果たさなくてはならない使命・役割等々がなくては話にならない
すなわち、”あるべき姿”と”現状”のギャップが”問題”に成り得る。

問題の感度や深度は,指向性(何について)があって初めて研ぎ澄まされる。
目的意識のないところでは,感度もセンスもアンテナも働かせようがない。 

どうすれば問題への感度を高められるか
 扇谷正造氏(https://ja.wikipedia.org/wiki/扇谷正造)は,問題意識を
 ①「空気にツメをたてろ!」
 ②原点に立ち返って問題を洗い直す
 ③煮詰めてモノをいろいろな角度から考える
と,された。「空気にツメをたてろ!」とは,あえて波風のないところに,波風を立てることと言ってもいい。
「意識的に問題にすること」とは,この意味である。
「原点に立ち返って」とは,何のために(目的),何をする(目標)ためなのかを洗い直せということだ。
「いろいろな角度から考える」とは,「タテヨコナナメ十文字」に考えることだ。
が、このアドバイスも、そもそもの目的意識が欠けていればから念仏に終わる。

「問題」への感度を高める
「問題意識」の感度を高めるとは,「当たり前」のこととして,「問題にしない」固定観念に流されないようにする
そのためには,次の3つの基本スタンスから始めなくてはならない。
 ①知っていることをアテハメない-「まてよ!」
  現状(いまあるもの),前提(いままでの経緯),条件(与えられた制約)を,鵜呑みにしない,
  そのまま当てはめない ⇒ 見えるままに見るな,知っているままに見るな
  「知っている」「わかっている」「やったことがある」という思い込みが一番まずい。
  わかっている!と思ったら,「本当にそうか?」と振り返らなくてはならない。

 ②別に答はないかと問い直す-正解はひとつではない
  問い方によって見え方が変わってくる-問い方が変われば正解は変わる。問いによって,
  分からない(知らない)ことが見えてくる,何が知らないことかが見えてくる。「答」がわかったら
  終わりではなく,出発点である。
  別の答を探さなくてはならないのである。 人の見つけた答をなぞって何が面白いか。

 ③キャッチボールする-(ヒトに,モノに,コトに)問い掛けてみる
  問わなければ,分からないことがある。問いかけて初めて,見えてくることがある。
  現場,現物,現実に当たる,誰かに問い掛ける,キャッチボールによって,情報の幅と奥行が
  現れる。
  3Mのポストイット開発をめぐる逸話で、シルバー氏が、接着剤を開発していて,貼っても
  すぐ剥がれてしまうものを創り出した。彼はそれを「失敗」とはみなさず、社内の技術者に、
  この特性を生かした使い道を考えてくれないかと主張し,それに応じて、いつも聖歌に挟む
  付箋に不便を感じていたフライ氏が、その使用方法として、ポストイットを発想したのである。

  ここには、大事なポイントが2つある。第一は、われず、何とかできないかと受けと
  める「聞く耳」をもっている人がいたということ。これが、③の趣旨である。「ブレインスト
  ーミング」はまさにキャッチボールを機能させるためのルール、つまり異見をいかに活
  かしていくかの仕掛けと考えるべきである。
  とすれば、何も何人かが集まらなくてはできないのではなく、こちらから、「これどう思う?」
  と問い掛けていく姿勢があれば、電話やEメールやインターネットのチャットがそのまま
  ブレインストーミングになっていく。
 
「問題」を掘り下げるスキル
 扇谷氏の,「煮詰めてモノをいろいろな角度から考える」で言う、多角的とは、タテヨコナナメ十文字にものが見れるかどうかということ。

その切り口は、次の4つに整理できる。

 ①視点(立場)を変える 
 いまの位置・立場そのままでなく、相手の立場、他人の視点、子供の視点、外国人の視点、
 過去からの視点,未来からの視点、上下前後左右,表裏など

 ②見かけ(外観)を変える
 見えている形・大きさ・構造のままに見ない、大きくしたり小さくしたり、分けたり合わせたり、
 伸ばしたり縮めたり、早くしたり遅くしたり、前後上下を変えたりなど

 ③意味(価値)を変える
 分かっている常識・知識のままに見ない、別の意味、裏の意味、逆の価値、具体化したり抽象化
 したり、まとめたりわけたり、喩えたりなど

 ④条件(状況)を変える
 「いま」「ここ」だけでのピンポイントでなく、5年後、10年後、100年後など

ここでいう、「変えてみる」とは,それを意識してみるという意味。
例えば、「視点を変えてみる」の,「視点を意識してみる」とは,「~と見た」とき,「いま自分は,どういう視点・立場からみたのか」と振り返ってみるということ。
そのとき,会社の立場で見たのだとすれば、それ以外の父親として見たらどうなるか、客の立場で見たらどうなるか,………など、別の視点にもうひとつは気づけるはずである。

その意識的な「問い直し」が、少なくとも問題意識の端緒であり、問題の感度を研ぎ澄ます出発点である。

是非、”問題にすべきこと”を”問題にする”ことができるようにしたい。

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